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鬼瓦の”持病” 
 持病が出たというか、こうなるとどうしてもこうなってしまう。

          
 相談を受け、「SOS」を受信したら、「俺と陶友がこの人を幸せにしてやるんだ」と思い込んでしまう。
悪い性分だ。良い所でもある。(つもり・・・)
そして新たな仕事をつくり、職員にも負担をかける・・・。
でも、いいのです。
大体、陶友も職員もそうして、障害を持つ人の悩みや「SOS」に向き合うところから始まり、そして成長してきたのだから。


 「ここに来てよかったです。ほんとにここに来ていいんですか?」
と、Fさんが言う。


 丁度1週間前の土曜日だった。
体重は35キロぐらいだろうか、小柄で心細そうなフミさんが妹さんにつれられて陶友に来たのは。
妹さんが、知人にこういうところ(作業所)があるときいて、下見に覗いてみたら開いていたので・・・、ということで、相談に乗ることになった。

 離島で暮らしていたが、離婚して、妹さんが福岡市内に引き取ったというのだ。
50才ちょっと。この春に中2の一人娘を不慮の事故で亡くしたらしい。唯一の支えであった娘さんを亡くし、責められて離縁されたらしい。
 激しく落ち込み、精神的にも一杯一杯で島にいられなくなって妹さんが引き取ったいう事だ。


 Fさんは、耳が聞こえない。


ここは給料はほんの少しで、仕事が物足りないかもしれないと話すと、
「自分を認めてくれるところが良い。心が休まるところが良い。」という。

 じゃあ1週間実習してみて、気に入ったら、そのとき正式な話は進めよう・・・そういうことで1週間が過ぎたのだ。

 Fさんにあった定番の仕事はなく、封筒のシール貼りや、陶器の値段シール貼りなどをお願いし、コツコツとやってもらった。

 発話はできるが聞き取りができないようだ。手話もわからない。(こちらも手話は駄目)
で、筆談でこちらから話しかける。

(仕事の内容が行き当たりばったりだから、不安?物足りなくて退屈じゃない?元気?)
「大丈夫です。楽しいです。」

(耳が聞こえなくなったのはいくつのとき?)
「小さい頃、高い熱が出て、鼓膜がダメになった。」

(自分の声は聞こえるの?)
「少し」
 多分、脳神経は大丈夫なのだろう。自分の声が骨を伝わって?聞こえるから、幼い時に外からの音を失っても発話はできたのではないだろうか・・・と思う。でも発話にも自信がなさそう。

(話すのは上手にできてるよ。よく聞こえるよ。)
・・・うれしそうに、笑う。

(今は決まった仕事じゃないけど、そのうち仕事を決めて、自分で考えてやっていけるようにしましょう。)
「ここに来ていいですか。うれしいです。」

(今までどんな仕事をしたの。)
「旅館の仕事とか・・・。でもみんなに誤解されて、耳が聞こえないから・・・。言うことをきかないとか、無視するとか・・・、知らんふりされたり。ここはいいですね。みんなそれぞれ明るいし、楽しそうにしている。やさしいし、心が休まります。」

(みんなマイペースだけど、それで良い。少しづつ頑張る。一人ひとり、自分なりに頑張る。力を合わせて助けあって。)
・・・涙ぐんで、うなずく。

(大丈夫だよ。人はみんないろいろ。比べなくていいんだよ。どんな人も大事な一人ひとり。みんな仲間です。助け合って、みんなが幸せになれるように頑張るのが「陶友」だよ。)
ハンカチを目にあてて、うなずく。

(僕が今、ちょっと心配なのは、Fさんが、仕事が物足りなくて退屈じゃないかな?ということ。そのうちやりがいのある仕事を作って、一緒にやろうね。)
「よろしくお願いします。」


 しょっちゅう近くにいて、筆談はできないが、以上、今日の筆談メモの一部から、書き込んでみました。
筆談しながら、Fさんの人生を思い、切なくて涙がにじんで、仕方なかった。



 午後、妹さんが来られて今後のことを話し合う。
Fさんはここに来たいと言う。妹さんも喜んでくれた。
ここには書けないような、切なくてつらい事情のために、手続きはもう少し先にすることにした。

 (でも、それまで毎日来ていいよ。その方がいいでしょう?)
「いいですか。よろしくお願いします。」

 給食費のこととかいろいろ気にしてはいたが、
(いいよ。そんなことはどうにでもなるから。)


 来週の予定を確認して安心したようだった。
帰り際に、Fさんがジュンくんが作ったお地蔵さんを「かわいい」といい、来週から陶芸をしてみたいといっていたことを思い出し、そっと、お地蔵さんのストラップを手提げバッグの紐に結んであげた。
「私にですか。いいですか。うれしいです。お守り・・・」と言う。
この人の笑顔は、申し訳なさそうで遠慮気味で、・・・切ない。


 「みんな幸せになる権利があるんだ!」と、強く思う。


小さな後姿を見送りながら、
「俺と陶友がFさんを必ず幸せにしてやる・・・」
と思うとまた、涙が出てきてしまった。

・・・持病の症状が悪化してしまった。 
「俺が俺が」とでしゃばって、
また沢山の人たちの力を借りなければならない。



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テーマ:福祉のお仕事 - ジャンル:福祉・ボランティア

鬼瓦

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